本日は 第86節 正義感覚の善 から
正義と善さの概念はそれぞれ相異なる原理と結びついている。
正義感覚は、正義の原理を適用し、正義の原理に基づいて行為したい、したがって正義の観点から行為したいという実効的な欲求にほかならない。
正義の観点を採用し、その観点に導かれて行為するという性向・構えは個人の善と合致する。
〔正と善との〕一致によって、善さの定義の一連の適用を完結できる。
秩序だった社会にあっては、善い人であること(そしてとりわけ、実効的な正義感覚を有していること)は実際その当人にとって善(単一の財)となる、と言うことができるのが第一点。
そしてさらに、この社会形態は豊口い社会である、と号口うことができるのが二点目。
第一の主張は〔正と善との〕一致から帰結する。
そして関連する二つの観点から見て、社会として欲するのが合理的である特性を秩序だった社会は備えているがゆえに、第二の主張が妥当性を有する。
したがって、〔関連するひとつ目の観点である〕原初状態の視座から見て、秩序だった社会は集団にとって合理的だと判定される正義の原理を充たしている。
そして〔関連する二つ目の観点である〕個人の見地から見るならば、正義の公共的構想を自分の人生計画を統制するものとして確証・肯定したいという欲求は、合理的選択の原理と合致する。
以上の結論でもって共同体の価値が裏づけられる。