連帯保証(16)

 

 黙示の合意について、高裁は次のとおり判示しました。

 

 

 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断する。

 

 その理由は、原判決記載のとおりであるから、これを引用等する。

 

 

 「控訴人は連帯保証人である乙の負担割合は零であると主張する。

 

 当審証人乙は、乙の連帯保証は形式的なものとしてしたにすぎない旨供述し、乙の陳述書にも同旨の記載があり、平成10年4月18日付の控訴人と乙の合意書には、控訴人が差入れた担保が不足する場合に限って、乙は連帯保証人としての責任を負い、担保物件たる本件譲渡物件の処分代金の範囲内では乙は一切の責任を負わないと合意した旨記載されている。

 

 しかしながら、上記各証拠をもって、乙の負担割合が零である旨の明示ないしは黙示の合意を認めるに足りないことは、以下に説示するとおりである。

 

 

 すなわち、乙が形式的なものにすぎないとして連帯保証したことをもって、控訴人主張の合意を認めるに足りないし、本件課税処分後に作成された甲10の〈1〉はたやすく信用できない。

 

 

 さらに、乙が平成3年に至って、控訴人とともに連帯保証人となり、2分の1の負担割合を負うことに何らの不自然はない。

 

 

 したがって、上記の乙とAの関係からすれば、乙がAの連帯保証人となった当時、乙がAの代表者でなかったとしても、そのことから乙の負担割合が零であったと推認することはできないし、

 

 控訴人が乙に対し保証の趣旨について、「会社に何かあったときは担保物件を処分して払う、十分な担保提供をしているのでお前に迷惑をかけない」と説明していたとしても、乙の負担割合を零とする明示ないしは黙示の合意があったということにはならない。

 

 なお、当審における控訴人の主張

 

 

    ア 主たる債務者が法人のとき、その法人の代表者と代表者以外の者が連帯保証人となった場合、

     代表者と代表者以外の保証人との内部負担割合は、100対零である。

 

    イ 担保を処分した代表者が保証人に求償することは、常識はずれのことである。

 

 

 

 

 は独自の主張であって、採用できない。

 

 

 また、乙はA振出にかかる受取人をB銀行とする約束手形24通の連帯保証をし、この連帯保証には何ら限定は付されておらず、また、B銀行御所支店長が乙に対し平成5年3月6日到達の書面で上記手形の全額について連帯保証人としての履行を請求していることに照らし、本件連帯保証が、本件譲渡物件及びAが本件連帯保証当時担保提供していた物件を処分しても不足が出た場合に責任を負うという補充的なものであったとは認められない。

 

 

 なお、平成10年4月13日付B銀行作成の書面は、物的担保のみでは債権全額の弁済を受けられない場合に備えて、本件連帯保証を徴した旨記載されており、本件連帯保証が本件譲渡物件及びAが本件連帯保証当時担保提供していた物件を処分しても不足が出た場合に責任を負うという補充的なものであったことを証するものとは認められない。

 

 

 そして、控訴人がB銀行に本件譲渡物件を担保提供した際に、同銀行との間で、控訴人が物上保証人として債務を履行した場合、B銀行の了解なくしては代位行使しないとの特約をしたからといって、共同保証人に対する求償権の行使が制限されることにならないし、この特約をしたことが乙に対して求償権を行使しない意思の表明であるとみることもできない。

 

 

 

 「控訴人は、保証人の求償権は、主債務の額に自己の負担割合を乗じた額を超える額を支払ったときに限り許されるところ、控訴人は、額面7億円の手形貸付についてAの連帯保証人であり、控訴人がB銀行に支払った金額は3億1829万6639円であって、主債務の2分の1に満たない額を支払ったにすぎないから、乙に対し、求償できない旨主張する。

 

 

 控訴人はA振出の約束手形のうち9通の手形金3億1500万円及びこれらにかかる遅延利息157万6380円と別の約束手形1通の遅延利息金172万0259円をB銀行に弁済したものであり、乙はこれらの手形につき連帯保証したのであるから、控訴人は乙が連帯保証していた上記手形債務の全額をB銀行に弁済したことになるのであって、控訴人の乙に対する求償権は上記個別の手形債務の弁済による消滅によって発生していることになる。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。